概要

薬理学は、近代医学において基礎医学と臨床医学を繋ぐ重要な役割を果たしてきた。現在の医学部においての薬理学の位置づけは、大きく変貌し、教育のみならず研究においても、基礎薬理学指向から臨床薬理学指向の方向へのベクトルが強くなっている傾向にあると考えている。基礎医学の臨床応用指向は、大学院教育も含め、社会のNeedsというよりはWantsとなっている。1940年近代薬理学の黎明期の薬理学の成書と言われている「Goodman & Gilman’s The pharmacological Basis of THERAPETICS」の巻頭序論に中に、「薬理学は、それ自体確固たる基盤の上に立つ基礎医学の一分野であるが、多くの前臨床ならびに臨床医学研究における各種の問題やそれに関連する医療上の技術の追求の上で、各領域と相互に知識と技術の交流を広い面で行う学問である」「医学生にとっては、薬理学的知識が、医学の実地修練に生かされない限り意味がない」と今日の臨床薬理学的思考こそが薬理学の王道であることを述べている。また、近代薬理学には、創薬プロセスと臨床試験、倫理教育など大きな社会的需要が発生している。さらに、IoT(Internet of Things)の活用によりすべてのモノがつながり、「第4次産業革命」の黎明期とも言われる中、医学分野においてもデータサイエンスの習得は必須になってきている。

日本大学医学部薬理学教室では、そのような観点を踏まえ、教育・研究・臨床(研究)支援を念頭に分野運営を行なっている。

教育

1. 座学においては、生理学を土台に、病態生理を理解し、その上での薬の役割を学ぶ。

2. 実習においては、in Vivo, in Vitro, in Silico,臨床試験を満遍なく織り込んだ実習課題を与える。特に、先駆的な取り組みとして本学臨床リアルワールドデータを用いたデータサイエンスの実習を行っている。

研究 および 臨床(研究)支援参考資料

医療分野においてのデータサイエンスでは日常診療の環境(Real world)で収集されたデータ<リアルワールドデータ(RWD)>が注目されている。2004年より学内連携組織として、臨床試験研究センターの運営にも寄与し、研究利活用として附属病院の日常診療で収集されたRWDを日本大学臨床データベースとして15年間超にわたり蓄積してきた。患者の病状や合併症、使用薬物などにより詳細な情報を収集し、創薬や医薬品開発、ゲノム医療にも応用するデータベースの構築を行い、臨床薬理学的研究を行ってきた。また、学内の医学研究ニーズに応えるべく、コンサルテーション、クラウド上でのデータ解析閲覧システムの構築なども行っている。